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『税務調査で否認される節税・否認されない節税』 2019年10月17日 開催セミナー 税理士から年間に約1,000件の税務調査の相談を受けている久保憂希也が「税務調査で否認される節税・否認されない節税」と題して ●節税だと思ったのに否認された【事例】 ●租税回避と否認されないための【線引き】 ●各節税手法において否認されないための【要件】 を解説しました。 節税手法には非常に関心があるが、税務調査で否認されるリスクまで考えると、積極的な提案を躊躇してしまうという税理士には必見の内容です。 https://kachiel.jp/ セミナー講師紹介 1977年 和歌山県和歌山市生まれ 1992年 智弁学園和歌山高校入学 1995年 慶應義塾大学経済学部入学 2001年 国税庁入庁、東京国税局配属 医療業、士業、飲食店、不動産関連などの税務調査を担当、また、資料調査課のプロジェクトで芸能人や風俗等の税務調査にも携わる。さらに、東京国税局にて外国人課税に関する税務調査も担当。 2008年 株式会社 InspireConsultingを設立し、税務調査のコンサルタントとして活動し、現在は全国で税務調査対策研究会を開催し、数千名の税理士に税務調査の正しい対応方法を教えている。 「節税」と「租税回避」の違い久保:はい、それでは定刻となりましたので、始めさせていただきます。皆さんこんにちは、久保でございます。早速ですけれども内容の方に移りたいと思いますけれども、否認される節税・否認されない節税ってこの言葉で今日キャンセル待ちが出てるらしいです。セミナー、10人ぐらい。なんでこんなに集まるんだろう、そんなに関心高いのかなと思う。否認される節税って言葉的に言うと、ちょっとおかしいような気がするんですよね。否認される節税・否認されない節税という、節税っていう限りは否認されないんじゃないの?っていう認識の方も多かろうと思うんですけど、それが違うというところと、税務署、国税が考える否認の分岐点というところで具体的に話を進めたいと思います。「節税」と提案した内容は本当に「節税」なのか? 久保:「節税」と「租税回避」の違いという一つ目の項目からいきたいと思いますけど、私仕事上ですね、今日もそうなんですけど、ネットとかでバシバシマニアックなワードを叩きまくるわけです。租税回避行為、相続税、法人税、所得税とか。そんなの多分、日本で今日叩いたのが2人ぐらいしかいないと思うんですけど。私マニアックなワードを叩くんです。マニアックなワードを叩けば叩くほどどういうのが出てくるかっていうと、大体二つに絞られていまして、国税庁系のいわゆる論文と、大体税理士事務所のブログ、ホームページが出てきます。今日も今回のセミナーがありましたので、節税、租税回避、違い、とかいろいろ検索してると、税理士さんの認識ってそんなもんなのかなっていうぐらい、たいてい内容が間違っているというのが、私の中では見受けられます。皆さんが顧問先さんに提案したとする節税方法があったとすれば、それは本当に節税なんでしょうか?というところが今回の題材でして、タイトル通り租税回避との違いというところですね。「合法・適法だから否認されない」のウソ久保:合法・適法だから否認されない、税務調査で否認されないっていうのはまったくもって嘘です。合法・適法だから否認されないっていうふうに書かれている税理士さんのホームページ・ブログがありますけど、それは間違いです。その間違いっていうのが何なのっていうところと、簡単に言うと節税と脱税と租税回避の違いをまず学んでいただきたいんですけど。(例1)同族会社に対する不動産管理料久保:例えばですね、これも昨日も税務調査対策研究会がここでありまして、この何人かの方受講されてましたけども、昨日も話したんですが、例えば同族会社に対する不動産管理料です。最近めっちゃ多いですからね。節税の基本的な考え方って今日の中でもいくつか出てくるんですけど、パターン1、節税のパターン1は簡単でして、税率の低い方に流す、ただこれだけです。今の時代で考えると法人税率が圧倒的に低くて、所得税率がまた上がっちゃってる。昔ほどではないにしても、所得税率が高い、法人税率が低い。相続の場合っていうのは資産の額によって違いますけども。ということを考えると所得税から法人税に流せば、それだけで税率の差分が生まれますので、絶対的な永久差異としての節税になる、これはもう馬鹿でも分かる論理です。一方で、個人の方がもう大体行為計算否認とか、租税回避行為とか調べていただくと、個人の不動産関連のものばっかり出てくると思うんですけども、個人の方が不動産をお持ちでして、別に何億円でもいいんですけど、不動産収入が1億円あったとしましょう。不動産収入1億円だと、普通にいく人って全然普通にいるわけなんですけど、個人の名義で持たれています、ということですね。実際にはここに借りている人がいると。という状況なので、今のこの取引でいうと借りている人が貸主である方に対して賃料を払っているという状況なんですけども、これは当然ですけど不動産所得なので、総合課税で税率がすごい高い、当たり前の話ですね。一方でやる方法としては、こんなの誰でも考えつくわけですけども、法人作って、同族法人作って奥さんを代表取締役にして、子供2人を取締役にして、自分以外の親族だけで法人を作ると。不動産管理手数料が、これサブリースでもいいですよ。サブリースしてからこっち側に貸し付けてもいいですし、こっちから上がってくるお金は10%とかっていう抜いても、不動産管理料でも、どっちでも結局所得は同じですけれども、10%として払いましょうと、いうふうに設定する。例えばの話ですよ。そうすると結果としては1,000万円が、所得が流れますので、奥さんが専業主婦で働いてない、子供2人も働いてないということになると、役員報酬を年額で600、200、200を取ったら、給与所得控除が当然ありますので、というふうに考えると、所得分散になってめちゃくちゃ節税になる。1,000万円がこっち側の所得で、おそらく住民税まで考えると50%超の実効税率になってるわけですけども、その税率が所得税が下がって、こっち側の法人税が実際にほとんど発生せず、所得税の源泉だけ発生すると。これ馬鹿でも分かる理論です。ここからなんですけど、ではです、これが節税だというふうにおっしゃってる人がいたとして、私が皆さんの顧問先さんだとして、普通に思うのは何を思うかっていうと、10%なんてもっといけるでしょうと。じゃあ20%いっときますかと。20%だとこれ2,000万円になりますから、奥さんが1,000万円取って子供2人で500万円ずつ取れば、法人の所得ゼロになりますし、まだ1,000万円ぐらいだったら給与所得控除も使えますし、全然いけるねという話です。では、いやいやいや20%がいけるんだったら先生、いっときますかと、30%です。って言って、これがどこまでいったら節税なのか、どこまでいったら租税回避なのか、どこにいったら脱税なのか。今のこの話は、気をつけていただきたいのは、不動産管理料を払ってもいけないとか払っていいとかっていう法律はない以上、別に払うのは自然なわけです。いくら払わなきゃならないとかいくらまでだったら損金不算入になるとか、そういう規定もないわけです。ということは何%にしなきゃならないという法律もないわけなので、別に何%にしてもいいんですよ、法律上は。だから何%にしても合法です、何%にしても適法です。ですけど、一般的に言われているところで言うと、20%あたりから国税側が目を付けるってわけですよ。何だったっけって言うと、不動産管理会社の一般的な不動産管理料の相場が8%から9%だから。大体10%くらいだったら国税は認めるけども、20%ぐらいになったらさすがにって言うことで、否認されるってわけです。いやいやいやおかしいじゃないですかと。今言ってることは率を変えただけですよねと。率を変えただけで何で否認される分岐点が来るんですかと。この分岐点は実際にはどこまでか分からないわけですけど、実際何で来るんですかと、いう話なわけです。てことは今の例でざっくり言うと、10%だと節税になるかもしれないですけども、30%だと租税回避って言われる可能性もあると。なんやねんと、どこに線引きがあんねん、節税ですと。これ節税ではございません、やってることは。租税回避行為の色が黒い方なのか、白い方なのか話をしてるだけです、私が今言ってるのは。(例2)社長に対する(役員報酬とは別に)業務委託料久保:次の例でいきましょう。これも実際に見たことがあるんですけれども、なかなかダイナミックなことを考えられる方がいらっしゃいますね、世の中には。社長に役員報酬をもちろん払っているんですが、社長の役員報酬が高い。そうすると給与所得控除が縮小されて所得税の税率も上がっている。社会保険料はもっと上がっているわけですから、役員報酬を減らして、外注費に、業務委託料に振り替える。例えば役員報酬を月額8万円とかに抑えて業務委託料に振り替える。それをすると法人側は所得を当然圧縮できますし、業務委託料は定期同額っていうルールはございませんから、法人側としては業務委託料で支払えるのであれば仕入税額控除も取れる。うん、完璧。社長に対して、役員に対して、取締役に対して業務委託料を支払ってはいけないという法律はございません、あるんだったらぜひ教えていただきたいんですが。では例えばです、社長に対して役員報酬を8万円で設定してあって年額100万円だと。業務委託料を2,000万円、3,000万円払っている会社があったとして、そこで税務調査に入られたとして、調査団は何をもって否認すると思います?これって。だって法律ないんですよ。税法の中で、社長に対して役員に対して業務委託料を払ってはならないという法律がないんですよ。法律はないんだけども、どうやって否認すると思います?これちなみにですね、すごい特殊なケースだと認められるのもあるんですよ。これ私が実際に見たケースでどういうケースかっていうと、これは個別事案なので、絶対的に認められるってわけじゃないんですけど。この中にも多分、芸能関係の仕事の顧問先を持たれてる方だったらいらっしゃるかもしれないですけど、あるバンドグループがありまして、そこのバンドグループが、簡単に言うとそこのリーダーが社長の会社があるんです、法人があるんですね。実際にはそれを物販収益とか、イベントとかって主催もやりながら自分たちのバンドとして出ているわけです。で、実際にコンサートがあります。コンサートがあるとバンドのメンバー実際に4人いるわけなんですけども、残り3人は役員ではございません。実際にはその会社に、所属しているバンドマンと同じですよ、他のバンドマンと同じです、扱いは。コンサートがあります、コンサートをイベント収入から経費を差し引いた金額に対して、半分を歌手であったりとか芸能人に対してお金を払うっていうルール設定をしてる会社なんですよ。残り3人は、これは簡単ですね、イベント収入があって全体の粗利が出て、その4分の1ずつを受け取ればいいわけですから。ですけど、そのボーカルの方は社長なんですよ。これどうするかっていうと、同じように業務委託料を払うわけですよね。あるいは役員報酬と違う、別に業務委託料が発生してることはこれ間違いがないんです。これはあくまでも個別事案ですけど、認められたケースは実際に知ってるんです。こういう特殊なケース以外は、実際に社長に対して業務委託料なんて払えるわけがないんです。こんなものが認められるんだったら、定期同額の意味なんてないですし、業務委託料変動させまくって、利益調整すればいいんですよ、という話になるんです。じゃあ、もう一回話しますけど、何法で、何法の何条で否認をするんですか、という話になると、分からんねと。だって法律にないんだから。違法 ⇒ 脱税/合法 ⇒ 節税 ただし、節税目的は租税回避久保:ということで「節税」と「租税回避」の違いということですね。ですから、あえて書かせていただくと、皆さんが顧問先さんに提案していたりとか、ホームページ、ブログで書かれているものが、実際には節税かどうかっていう判断は、どういうふうにしなきゃならないかっていうと、実は節税っていう言葉自体はかなり範囲が広くて。節税、脱税、脱税がクロであれば節税はシロというふうに考えていただいたらいいんですけども、この中に、この間にですね、この間に租税回避行為がずっとあるということですよ。だから正確に言えば、節税と租税回避の境界線なんて誰も分からないです。さっきの不動産管理料の、いや10%だったら行ける? 20%だったら駄目?誰がのたまったやん、と、知りませんがな。実際は不動産管理の役務提供をどの程度やってるのかっていうものにもよるでしょうし、事実判断は個別の事案によって変わってきますけど、節税がシロだと考えれば脱税がクロで、その間にグレーの租税回避がずっとあるわけです。白っぽい租税回避もあれば、黒っぽい租税回避もあるということなんです。だから皆さんが顧問先さんに何を提案しているのか私は分からないですけど、実際にブログなんか、ホームページなんかを拝見させていただくと、いや明らかにこれ、租税回避行為でしょうというふうなものが普通に載っているわけです。だから結構書き方としては危険になるわけです。「利益の繰延」は節税にならないのか?久保:で、この後に租税回避行為が否認される具体的な中身であったりとかを検証していくんですけど、その前に結構勘違いされている方が多かろうと思いますので、利益の繰延は節税にならないのかなるのかっていう論点って、結構ここ数年は流行った議論ですけど、私はそもそも国税の出身ですから、利益の繰延なんかやって何が嬉しいの?って。例えば保険入って、14年とか15年でピークきて、そこでまた益金当たって、あれはもう、益金消すためにまた保険に入るっていう、もう永久のループみたいのずっと繰り返してて、みんな。利益の繰延なんて節税にならないでしょうっていうふうに、ずっと国税なのでそう思って生きてきたんですけど、実際になるパターンというのがありますね。3つの節税になるパターン久保:なるパターンは三つあります。例えば14年後、15年後に、その先分からないですけど退職をされる社長、創業社長がいて、大きな退職金で損金が決まってるってパターンであれば、当然、利益繰り延べて、所得繰り延べて、そこに損金当てるっていうことなのであれば、そこで当て切っちゃって、損金にすれば、当然ですけど節税になります。あと一時的なものですけど株価の対策ですね。相続税の対策であったりとか、株を移転するときに使われますけども株価の対策。株価下げっていうのは一瞬で下げれますので。ということで考えると、割と一瞬でできる。これはごめんなさい、もう考え方次第だと、いうふうにはっきり言わせていただきたいんですけど、実行税率が実際にこれから下がると思われるのであれば、絶対的に繰り延べた方が税率は下がります。おそらくですが、ここから10年間法人税率が上がることは私はないと思っていますが、何の保障もありません。ここ5年間で実効税率すごい下がってますよね、実際に。この5年間ってことは7、8年前に保険に入ってて、今、解約もしくは満期を迎えた保険があるとするなら、それは相当な節税になってるはずなんですよ。それは当たり前ですよ、繰り延べて税率が下がってるだけですから。国際競争力の問題で税率は基本的に下がり続ける、法人税率は下がり続けるっていうふうに言われているので、そういった意味において言うと、下がる方に相場が、法人税率が下がるというふうに張るのであれば、繰り延べる意味はあるんですよ。上がらないと思いますけどね、法人税率は。消費税率上げておいて法人税率上げることは普通考えられないでしょうから、っていう考え方もあるってことですね。ですから利益を繰り延べるっていうところの節税においては意味がないことではない。先ほど言った通り基本的な考え方としては、税率が高い方から低い方に移す、これ基本的な一つ目の考え方ですね。二つ目の考え方は利益を繰り延べることによって、損金に当てるとか一時的な株価対策するとか、将来的な実効税率が下がる方に張るのであれば、それは節税になっている、というのが二つ目の考え方です。これいくつかの考え方がまだ出てくるんですが、節税の考え方です。

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著者プロフィール 金田一 喜代美(きんだいち きよみ) Kiyomi Kindaichi セブンセンスグループ/Seventh sense GEPAS 株式会社 取締役COO 税理士(5科目)・CFP・MBA 中央大学法学部国際企業関係法学科、中央大学専門職大学院(MBA取得)、慶應義塾商学研究科修士課程修了。 大手監査法人にて上場準備経験有。 近年は、米国、豪州、シンガポール、等の相続法務税務、ITIN・Trust等諸手続きコンサルテーションに従事している。 【執筆】 「マンガでわかるかんたんQ&A」、「知って得するやさしい税金」、「相続から創続へ」、「国際相続・贈与がざっくりわかる~海を超える次世代資産~」、「税経通信」令和2年3月号 国際資産税特集 “財産取得者の納税義務の判断とその課税関係の調査” 等。 【Blog】 TAXINFOMATION シンガポール企業の“MEP” Management Equity Plan(福利厚生インセンティブプラン)~株式償還時の日本での課税関係(過年度含)~ <Ⅰ.MEPについて>  はじめにMEPという株式報酬制度は、マネージメント・エクイティ・プランの略称である。 MEPの目的としては次のようなものが挙げられる。 経営陣と支配株主であるA社との利害を一致させ、グループの業績に焦点を当てる。 出資者にビジネスを持続的に成長させるインセンティブを与える。 経営陣の努力に対して、通常の報酬以上の報酬を与えることができる。 主要なスタッフにグループ内に留まるようインセンティブを与えることで、チーム内の安定性を高めることができる。 投資機会を通じて、重要なシニア人材を当社に惹きつけておく <Ⅱ.本案件の概要と検討内容>  シンガポールに本社があるX社の業務委託者Y氏は、当該社の経営陣ではないが、特別枠として2017年3月に、業務委託先X社から、X社のインセンティブプランをSGD(シンガポールドル)建てで付与された。 その後毎年一部の優先株のインセンティブが報酬に加算として振り込まれていたが、申告が必要であることを知らず無申告であった。  2021年になりX社は上場を行わず、持株全部を他社に売却および償還した。これに伴いY氏が2022年6月に所有するインセンティブプラン全種は償還されて、Y氏の日本口座にドルで送金された。 これらの2017年から2022年の償還金額についての、日本の課税はどのようになるかという事例の検討になる。  結論としては、国内税法では、配当金および売却益として課税されることが妥当であると考えられる。これについてその売却益および配当金に対する課税額について検討した。  さらに、過年度に申告をしていなかった年分については、別途ペナルティがかかる可能性があり、その金額も本報告書において改めて詳細を示した。 <Ⅲ.スキームについて> 1)本事案MEPは、2つの商品で構成されているが、1つのパッケージとして捉える必要がある。 普通株式はマネージャーに割り当てられ、2種類の組み合わせとなっている。 1株当たり1SGDドルで当グループの株式を保有することができる。 機関投資家のストリップは、再投資額の残額を普通株式と組み合わせて取得する。 普通株式と優先株式の比率および経済的権利は、各投資家はグループにおいて同等である。 優先株式年7%の複利 2)2017年3月初期投資としてY氏の業務委託報酬から投資金額が控除され、直接SGDでB,C優先株式とC普通株式に投資された。投資先はバージン諸島に本拠をおく従業員福利厚生信託である。 3)インセンティブプランは普通株式の一部が毎期配当され、優先株式は年利7%で運用され会計年度12月31日で締めて複利で増え額面にグロスアップされていく。 Y氏は受益者として、X社株式を福利厚生信託におき、受託者であるC Limited(ノミニー)を通じて株式は運用される。キャッシュレス再投資方式により、X社からB Ltd.に自動的に投資される。 ストックオプションの付与時にX社株を保有していたファンドはB社であり、最終的にX社はIPOせずに、別のファンドに買収された。買収は2022年6月に完了した。 (資本構成とグループ全体図) マネージャーはEBTを介して投資する。 「EBT」とは、Employment Benefit Trust雇用給付信託のことで、未割当ての管理株式も含めて保有し、Nominee arrangements(経営陣の株式を保有)の両方を指すために使用される。 <Ⅳ.判明している事実の概要> このスキームは従業員福利厚生持株会であることと、運用しているのは欧州にある法人から委託されたノミニーであることになる。 そして開始時点で株式公開はせず、企業価値と株価を高めたあとの2021年末にX社株式は全部スクイーズアウトの公表がされ2022年6月にExitされることが決まっていた。 今回の償還資産の種類は、新株予約権(SO)ではなく、現物株式(普通株と優先株)だった。 従業員福利厚生持株会の組織の登記がされている現地はタックスヘイブン地のため償還時は現地では課税はされないとの記載がある。 Y氏の職責は雇用関係のある従業員ではなく、重要な外部業務委託先としての契約となっている。 <Ⅴ.課税関係> 判明している事実に伴って、課税関係を検討する。 1)スクイーズアウトに伴う新株予約権の場合 被買収(MA)に伴うスクイーズアウトであるため、仮に償還が新株予約権となれば一般的には下記のような課税関係が成り立つ。 新株予約権の場合、買収によりスクイーズされるとその時点で譲渡制限が解除されるため、給与か事業所得(または雑)かの総合課税になる。 ただし、この事案は外国法人からのSOであるので税制適格は対象外となる。 買収後に株主の業務取引も同時に引退であれば雑所得、継続するのであれば事業所得に区分できると判断される。ただし、基本的にはいずれの区分でも税額は同様。 2)一般株式の場合 新株予約権ではなく原株式の売却であれば、通常の株式売却で検討となる。これであれば日本の有価証券にかかる所得は分離課税になるためY氏の総合課税税率と比較すると20.315%の低率になると判断される。 3)その他の課税関係 ①国内:2017~2022年の各期間における配当について、その後どのような取り扱いになっているかについては額面への組み入れ(グロスアップ)または、現金で支払われたかによって過年度申告が必要かを検討する必要があると言える。 ②国外:スキーム表よりバージン諸島での運用及び償還時には一切の課税はされないことになっているため、いわゆる二重課税は発生はないと判断される。 <Ⅵ.申告の遅延に伴うペナルティについて> 実際の税額の計算を行うに先立って、申告の遅延に伴うペナルティの発生の有無を下記のとおり検討する。 「1.年度ごとに申告を行った場合」ならびに 「2.税務署の指摘を受けて各年度申告に修正した場合」の2つの条件に分けて検討をする。 ただし、2022年に一括で申告を行う場合はペナルティを支払う義務が発生しないため、本項では検討していない。 なお、2018年度分からY氏が事業所得についてすでに期限内に確定申告をされていると仮定して、すでに行った申告について税額が少なかった場合などに行う「修正申告」を各年度について行うという前提に立って検討をした。 そのため、過年度において事業者でなかった等の理由で確定申告をしていない、もしくは期限後に申告を行った年度があった場合は、下記の検討事項から結論が変わる可能性が十分にある。 1)年度ごとに申告を行った場合 ①延滞税 納付期限後の申告となるため、延滞税が発生する。 修正申告の場合は、「期間の特例」により延滞期間は納付期限から申告日までではなく、1年を超えた分の延滞税については課税免除されるため、2018年~2021年度の過年度分の申告のいずれについても1年分の延滞税が課税されることとなる。また、延滞税の税率は年度ごとに異なるため、該当年度の税率を用いて税額を計算する。 ②過少申告加算税 過少申告加算税は、確定申告において、期限内に提出した申告書の申告納税額が過小であった場合に課せられる加算税の一種であり、修正申告の場合は基本的に課税対象となるが、税務署の調査を受ける前の自主的な修正申告については課税が免除される。本ケースでは、税務署の調査を受けておらず自主的な修正申告にあたるので、過少申告加算税は発生しないと考えられる。 2).税務署の指摘を受けて各年度申告に修正した場合 ①延滞税 納付期限後の申告となりますので、延滞税が発生する。 修正申告の場合は、「期間の特例」により延滞期間は納付期限から申告日までではなく、1年を超えた分の延滞税については課税免除されるため、2018年~2021年度の過年度分の申告いずれについても1年分の延滞税が課税されることとなる。 また、延滞税の税率は年度ごとに異なるため、該当年度の税率を用いて税額を計算することとする。 ②過少申告加算税 過少申告加算税とは、確定申告において、期限内に提出した申告書の申告納税額が過小であった場合に課せられる加算税の一種です。税務署の調査を受ける前の自主的な修正申告については課税が免除されるが、本ケースでは、税務署の調査を受けたのちの修正となるので過少申告加算税が発生することとなる。過少申告加算税の金額は、新たに納めることになった税金の10 %相当額となるが、新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%となる。 本ケースの場合、過年度分の申告については、追加の納税額がそれぞれ50万円以下となるので税率は10%として計算する。 ③重加算税 重加算税とは、過少申告加算税などが課税される場合に、内容が仮装隠蔽であるなど悪質だった場合(たとえば、二重帳簿を作成した、帳簿書類の破棄、隠匿、改ざんをしていたなど)に、その過少申告加算税などに代えて課税される附帯税のことを指すが、本ケースの場合の申告は単なる申告漏れによる修正申告となるので、悪質な内容には該当しないため、重加算税は発生しないと思案される。 <Ⅶ.課税額の具体的な計算方法> (設定条件) ※以下の数値についてはすべて架空数値で行っている。 投資額 1,704,319円-手数料=1,729,941円 1株SGD 14.62 (2017年3月17日) 株種類 当初  1,229株 B 種普通株式   マネージメントストリップ  10,000株 C 種普通株式   スイートエクイテイ  107,098株B 種優先株式  118,327株 額面 なし 利率 B優先株のみ7%複利計算額面グロスアップ 2021年6月にB優先株23,933株のみ償還 ・・・・SGDドル(31,823.92) 2022年6月にその他すべての株式94,394株を償還・・・・米国ドル(309,339.87)およびSGDドル(118,044.02)  ※上記償還額には毎年の配当金と株式売却益が含まれている。  (為替は毎期会計年度末のレートを使用) 1)税額一覧 ※以下の数値についてはすべて仮数値で計算したものとなっている。 上記の設定をもとに税額を計算したところ下表のような税額となる。 2)税額のサマリー 上記より各税額は以下の通りとなる。 以下、黒文字は原則的計算になり、紫文字は例外的な考えによる計算である。 ①配当金にかかる所得税額の計算 ―1―:各年度申告を行った場合 【配当金にかかる税額 総額:161,469円】 2018年 32,645円 2019年 35,285円 2020年 36,152円 2021年 37,468円 2022年6月償還分 19,919円 <比較> *B優先1回目分 過年度の配当金の累計金額を配当所得として税額計算した場合は30,059円 (配当所得 (450,098-349,900)*30%) 上記通常配当課税の合計が27,279円であるのでそれほど変わらない。 (7,295+7,885+8,079+4,020) *B優先2回目分 過年度の配当金の累計金額を配当所得として税額計算した場合は255,498円 (配当所得 (2067533-1215872)*30%) 上記通常配当課税の合計が134,189円であるので毎年課税の方が安いと考えられる。 (25,349+27,400+28,073+33,448+19919) 【償還(売却】にかかる所得税 総額:0円】 B優先株式1回目の償還益  0 (償還450,098-額面450,098;グロスアップ後) B優先株式2回目の償還益  0 (償還2,067,533-額面2,067,533;グロスアップ後) ―2―:2022年度に一括して申告した場合 【配当金にかかる税額 総額:285,558円】 <比較> *2021年6月償還分(B優先1回目) 過年度の配当金の累計金額を配当所得として税額計算した場合は30,059円 (配当所得 (450,098-349,900)*30%) 上記通常配当課税の合計が27,279円であるのでそれほど変わらない。 2022年6月償還分(B優先2回目) 過年度の配当当金の累計金額を配当所得として税額計算した場合は255,498円 (配当所得 (2,067,533-1,215,872)*30%) 上記通常配当課税の合計が134,189円であるので毎年課税の方が安いと考えられる。 ②売却益にかかる税額の計算 ―1―:みなし取得価格を適用しない場合 【償還(売却)にかかる所得税 総額:8,534,688円】 (内訳) B普通株式売却益 4,598,134 C普通株式売却益 37,413,625           42,011,759円*税率20.315%=8,534,688円 ―2―:みなし取得価格を適用する場合 ★仮にみなし取得価額5%で計算した場合は、2,110,352円 【償還(売却)にかかる所得税 総額:8,145,642円】 B普通株式売却益 891,531円(売却価格(4,619,514 円-230,976円) C普通株式売却益 7,254,111円(売却価格(37,587,529 円-1,879,376円)           42,011,759円*税率20.315%=8,145,642円 ・実際の税額は100未満端数は切り捨てになる。 ③延滞税の計算 延滞税は各年度固有の税率に各年度の所得の総額をかけて税額を計算したところ、2022年度に一括して申告を行った場合については、延滞税は発生しない。 ④過少申告加算税 税務署の指摘を受けて各年度申告に修正した場合にのみ過少申告加算税が発生することになる。 税額は、「(課税基準期間)×10%×(納付額)」として計算しています。また、課税基準期間は、2022年度3月に申告および納税すると仮定して、「(課税基準期間)=2022年―該当年度」としている。 ・実際の税額は100未満端数は切り捨てになる。 <Ⅷ.考察>  各場合において、納税額を計算したところ下記の通りになることが判明した。 みなし所得価格を適用する場合、各年度申告した場合の納税額(住民税を含む)は、2022年度に一括して申告した場合と比較して、納税額が161,882円低くなるという結果となった(12,374,173円-12,536,055円)  また、税務署の指摘を受けて2022年の一括申告から各年度申告に修正した場合、はじめから各年度申告を行った場合と比較して、追加で34,621円のペナルティが追加されることがわかる(12,374,173円-12,408,794円)。 1)各年度申告した場合 ①みなし取得価格非適用 ―所得税納税額(ペナルティ含む):8,699,727円 ―住民税納税額:4,254,999円 ―総額:12,954,726円 ②みなし取得価格適用 ―所得税納税額(ペナルティ含む):8,310,680円 ―住民税納税額:4,063,493円 ―総額:12,374,173円 2)2022年度に一括して申告した場合 ①みなし取得価格非適用 ―所得税納税額:8,820,247円 ―住民税納税額:4,296,362円 ―総額:13,116,609円 ②みなし取得価格適用 ―所得税納税額:8,431,200円 ―住民税納税額:4,104,855円 ―総額:12,536,055円 3)税務署の指摘を受けて各年度申告に修正した場合 ①みなし取得価格非適用 ―所得税納税額(ペナルティ含む):8,734,348円 ―住民税納税額:4,254,999円 ―総額:12,989,347円 ②みなし取得価格適用 ―所得税納税額(ペナルティ含む):8,345,301円 ―住民税納税額:4,063,493円 ―総額:12,408,794円 <Ⅸ.むすびとして> Y氏は、X社の役員および従業員ではなく、業務委託者である。また最終的に取得した株式償還時の株式報酬はSOではなく原株であったため、日本での課税関係(過年度含)についての所得区分は、配当課税と譲渡所得であることが判明した。さらに過年度分と確定申告を行うにあたっては次の点について検討をする必要がある。 A.年度ごとに申告を行うか2022年度に一括で申告を行うか B.みなし取得価格を適用するか A.については、年度ごとに申告を行う事が適正である。しかしながら、税額が僅少であることや申告の費用や手間および延滞税等を総合的に勘案して重要性から判断するとまとめての申告をする判断余地も残される。 また、B.については、年度ごとに申告を行う場合においても、一括で申告を行う場合においてもみなし取得価格を適用することで約58万円の税金の減額が実現できる可能性がある。 また当該MEP(Management Equity Plan)はタックスヘイブン地であるバージン諸島で運用されていたため、外国での課税は発生しないため、二重税額控除も発生していない。 当該事例は、海外からの株式報酬について、その種類と付与者の職責によって所得区分が異なる点、外国での課税状況、過年度の申告処理とその延滞税の検討等、多面的な検討を要する事例となっている。今後遭遇する海外からの株式報酬の日本での課税事案の一助にしていただければ幸いである。 <Ⅹ.ご留意事項> 本事例は作成時点における税制、及び公表資料を基に作成している。本事例作成のために提供された情報、資料は、本事例を作成する上で、有効かつ妥当であることを前提に分析しているが、情報、資料の完全性、正確性、網羅性を何ら保証するものではありません。 登場する法人名等、数値は仮の数値で計算しております。 したがって、提供された情報、資料の誤りに基づく本資料への影響については、弊社は一切責任を負いません。 <Ⅺ .参考として資料および電子媒体資料等> 質疑応答事例国税庁 被買収会社の従業員に付与されたストックオプションを買収会社が買い取る場合の課税関係|国税庁 (nta.go.jp) スクイーズアウトの法務税務/森濱田松本法律事務所 SOを買収する場合の課税関係/PWC その他

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